未完のまま四十数年間オクラ入りになっていた大長編が刊行されました。これで彼の小説は全て本になりました。

幕末を舞台に忍者や新選組が活躍する『熱風至る』(幻戯書房)です。

山田風太郎と司馬遼太郎をちゃんぽんにして本人は大河ドラマ化を狙ったらしい。

遅筆堂文庫には、夥しい書き込みや傍線が付された新選組関係の書籍がずらりと並んでいます。その謎が解けた。

発売は11月16日井上ひさし満88歳の誕生日。

本人の著作でその日に発刊されたものは実は今までに一冊もありませんでした。

 

しかし奥付の出版日付というのはけっこういい加減で、この本は数週間前からお店に並べられています。

つまり元旦の前に年賀状を出すようなものか。ともかくご祝儀にいかが。ハツラツとした若き井上ひさしに再会できます。


文・井上恒(井上ひさし研究家/川西町地域おこし協力隊)