悲しいおしらせが届きました。
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井上ひさし研究会会長の今村忠純さんがお亡くなりになりました。
なんたる縁か、井上ひさしと同じ命日になります。
4月9日。ここフレンドリープラザで吉里吉里忌が開かれていた当日でした。
生活者大学校発足後、幾度か参加なされ、また、ご自身の研究のために、何度もこの川西町を、遅筆堂文庫を訪れてくださいました。
『ここが地球の中心 井上ひさしと遅筆堂文庫』(遅筆堂文庫プロジェクト編集 2015年川西町刊)には「二十二万冊と四千歩」をご寄稿いただきました。伊能忠敬の「根気のよさは、井上ひさしその人の根気のよさそのものであった」。
「『四千万歩の男』からやはり私はどうしても井上ひさしの血みどろ泥みどろの四千万の智恵の詰まった遅筆堂文庫を思わないではいられないのです」。
これはすなわち資料を博捜網羅し、読み込み、鋭く分析する今村さんの真摯な研究態度でもありました。
2017年4月16日、吉里吉里忌において、古屋和雄さん(元NHKアナウンサー)を司会に、今村さんと山口昭男さん(元岩波書店社長)との鼎談が行われました。全12巻の『短編中編小説集成』(岩波書店)の刊行を記念してのものです。題して「小説のたくらみと愉しみ」。このとき今村さんが挙げた井上ひさしのお薦め作品は『合牢者』や『四捨五入殺人事件』など。いずれも歴史の闇の部分を庶民の側から語ったもの、それが彼の根幹をなすたくらみであったと述べられました。
そして2019年4月、井上ひさし研究会(事務局は遅筆堂文庫)発足総会が開かれ、今村さんが会長に選ばれます。就任の際、宮澤賢治をひきあいに出しながら「井上ひさしの遺した数知れない言葉の宝石を読みかえすことによって、その一人一人が宝石の所有者になろうとおもいます」と挨拶なさいました。
この場で数々のご業績を網羅することは不可能です。ましてや井上ひさし以外に関する研究については私の能力に余ることです。そこで、一つだけご紹介するとすれば、『井上ひさしの宇宙 [国文学解釈と鑑賞]別冊』1999年至文堂刊。今村さんの編集による渾身の一冊です。
『ここが地球の中心』とともに図書館のカウンターで販売しております。
ぜひ今村さんの文章をとおして井上ひさしに触れてください。
13年ぶりに再会を果たし談笑するお二人が目に浮かびます。合掌。
文:井上 恒