東日本大震災から10年、図書館という立場で被災地の記憶を記録する作業に取り組んできた加藤孔敬さんと“一箱本送り隊”として被災地と関わってきた南陀楼綾繁さんに「本のある場所」のいまについてお話いただきました。


はじめに南陀楼さんから、雑誌『ダ・ヴィンチ』6月号で特集された“10年後の被災地をめぐる「本のある場所」のいま”の取材の時のエピソードをお話いただきました。震災後いろいろな形で本に関わる人たちをご紹介いただきました。その後、震災当時「東日本松島市図書館」で勤務をしていた加藤さんから、図書館の役割として東日本大震災直後の記憶や避難生活での記憶、その時貼られていたチラシや一般の人たちによって撮られた写真などをどのように記録しアーカイブを作り上げていったかを話していただきました。記憶を記録することは大切だけど、震災というツライ記憶を聞き出すことはとても大変な作業だったと思います。そして、アーカイブをつくるだけではなく、今後どのように活用していくかも大切だと話されていました。

当時の避難所には、各地から多くの本が届いたそうです。南陀楼さんも「一箱送り隊」として石巻の被災地に本の支援を行っていました。今でもその縁は続いています。
東松島市の避難所では、大学生が小さい子供たちに読み聞かせをしたり、本を通して人との交流が生まれていたというお話もありました。
ただ、「本を読む自由もあれば、読まない自由もある。自由であることが大切だ」という加藤さんの言葉にハッとさせられました。支援の押し付けになってはいけないと強く心に刻みました。

トーク終了後、加藤さんは映像や写真よりも文字の方が許されているように思うと話していたのが印象的でした。

大きな被害こそ出ていない山形県ですが、東日本大震災という出来事は誰の心の中にも何かしらの想いを残しました。10年が経ち、まだ復興途中です。ただ、一つの「歴史」としての出来事にもなりつつあります。私たちは、その歴史を今後どのように伝えていくのかを考えさせられたトークイベントでした。



遅筆堂文庫 書庫にて