井上ひさしさんの命日ですー2022
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記憶に残るサービス精神
1992年夏、遅筆堂文庫生活者大学校開催中、川西町農村環境改善センターの2階で執筆中の井上ひさしさんと
翌年3月予定の公演、こまつ座「イーハトーボの劇列車」について雑談していた時のことである。
「これまで10年間一緒に仕事をしてきて、皆さんの仕事と宮沢賢治の仕事を重ね合わせる作品を
作らなければいけないと思ってるんです。賢治のイーハトーボとは別に芝居をきちんと書いて、
賢治三部作にしていこうと・・・」
もちろん、実現することはなかったが、心そそられる話に、うれしくなってしまった記憶がある。
相手の気持ちを即座に見抜き、言葉を駆使して話しかけてきてくれる。
まさに「サービス精神旺盛」な、井上さんのあの笑顔が思い出される。 (阿部孝夫)
数えてみれば
どなたもよくご存じのように(とは、井上ひさしが好んだ前置き)、西洋では12と13は表裏一体、
特別な意味を持つ。 13個を意味するbaker’s dozen(パン屋の1ダース)という表現もある。
かつて英国で、パンの目方に厳格な基準があって、違反すると罰せられた。
それを恐れて1ダースにつき1個余分につけた習慣から、と辞書にあった。
ウラジーミル・ナボコフの短編集『ナボコフの1ダース』に13編収められているのはこれをもじってのこと、
とこれもものの本による。 というわけで東西の鬼才の共演、われらがカトリシャンが福音書を書けば
こうなってしまう。『十二人の手紙』13編。
井上ひさし没して12年すなわち十三回忌。
仏教とキリスト教、妙なところで数のトリックが共通する。(井上恒)